BACK 2023-03-13

中国のゲーム企業がCSRへの取り組みを拡大

  ゲーム関連調査会社の伽馬数据(CNG)がまとめた「2021年中国ゲーム産業企業社会的責任調査報告書」(以下、「報告書」という)が2022年3月、発表された。「報告書」では中国のゲーム企業による社会的責任の履行状況を数値化し、企業の社会的責任(CSR)のあり方や業界を取り巻く現状について詳細な分析を行っている。「報告書」が発表されると、業界内や社会各界から広く関心を集めた。

  近年、中国のゲーム産業は目覚ましく成長しており、ゲームの数、質ともに昔の比ではない。それに伴い、ゲーム産業の社会的な影響力も次第に高まりつつある。ゲーム産業の発展環境が日増しに整う中、ゲームメーカーや関連企業にも社会的便益を高め、社会的責務を積極的に担うことが求められている。

  国の科学的な舵取り、企業の積極的な参加、大衆の認知向上を背景として、中国のゲーム産業も日増しに社会貢献に取り組みつつある。「報告書」によると、2021年中国ゲーム産業の社会的責任指数は13.4で、3年連続上昇しており、中国ゲーム産業の社会的責任の履行状況は堅調だ。未成年者保護に継続して力を入れているほか、社会貢献や文化の伝承、環境、文化観光面での刷新など、管理の強化においてもさらなる役割を果たそうと努力している。

  未成年者保護ネットワークの整備

  未成年者の健全な成長を守ることは、ゲーム業界が取り組むべき重要な課題であり、社会各界の関心が高い問題でもある。「報告書」によると、2021年未成年者の保護状況は大きな進展が見られた。例えば、未成年者のゲーム遊びの時間が客観的に減少した。データによると、子どものゲーム遊びの時間が短くなったと顕著に感じている保護者が40%に上り、未成年者のオンラインでの娯楽行動のうちテレビゲームは5位にとどまった。

  このデータの背景には各方面の後押しがある。政府レベルで言えば、国の関係部門が未成年者保護に関する一連の政策を相次いで打ち出しており、しかも約20年という長期的なスパンで、政府の関係部門から高い関心が寄せられている。また、未成年者保護が健全にゲームを楽しむためのアドバイス、ゲームプレイ時間の制限、チャージ金額の制限、ゲームの実名認証などの機能に相次いで落とし込まれ、管理監督の方法が度重なる模索を経て、多様化している。管理監督もさらに厳格化している。例えば、未成年者のゲーム遊びの時間を決められた日の決められた時間帯に1時間のみプレイできると短縮することで、未成年者向けのゲーム依存対策が行われている。

  企業レベルで言えば、より強力な対策を主体的に試みている企業もある。中国のゲーム大手NetEase Gamesを例として取り上げる。NetEase Gamesは一連の厳しい対策を実施する一方、これまでに蓄積した技術を生かして、AIやビッグデータなどの技術を未成年者識別介入に取り入れている。また、防止、管理監督、周知啓発が一体となったNetEase Games保護者思いやりプラットフォームや、未成年者を対象とした未成年者保護センターを設立した。長年の未成年者保護の取り組みを踏まえ、NetEase Gamesでは未成年者保護の視野を広げ、綿密かつ精密な未成年者保護ネットワークを構築している。

  ゲーム産業の社会的価値の発揮

  近年、ゲーム産業は文化の新たな発信媒体としての役割が顕著になっている。データによると、2021~2022年国の文化輸出重点企業のうちゲーム企業が20.6%を占めた。中国伝統文化の対外発信を担う国産ゲームが増えており、これにより多くの海外のゲームファンが中華文化の魅力に触れることができるようになっている。

  例えば、人気のPCマルチプレイヤー対戦ゲーム『NARAKA: BLADEPOINT』はリリース後たちまち国内外のゲームファンから広く好評を博した。同作ではさらに中国伝統文化推進プロジェクト「金烏記」をスタートさせた。先進技術を用いて中国の伝統工芸や無形文化遺産をゲーム内で表現し、中国文化の奥深さを世界のプレイヤーに伝えるとともに、文化発信や遺跡保護などの取り組みを力強く推し進めている。NetEase Gamesの名作である『夢幻西遊』PC版では無形文化遺産の伝承に力を入れており、2021年11月には青花分水技術の継承者とのコラボにより古典と流行を織り交ぜた青花磁作品を制作し、無形文化遺産の魅力をプレイヤーに届けた。似たような例には『流星群侠伝』もある。無形文化遺産の継承者とのコラボを通じて、数千年にわたり受け継がれる龍泉剣鍛造技術をゲーム内で表現した。

  同様に中国が世界に誇れる伝統文化としては、美しい名所旧跡がある。例えば、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』モバイル版と景徳鎮風景区とのコラボや『人狼殺公式』と烏鎮とのコラボといった事例では、景勝地の特色をゲームに落とし込むことで、伝統文化や特色ある文化の発信を促し、現地の文化観光産業の発展を客観的に牽引している。

  周知のとおり、社会的価値をより良く発揮するには、企業が社会の現実に目を向ける必要がある。なかでも社会貢献は企業が社会に関心を示す上で必要なものであり、積極的に取り組む姿勢の最たる現れだ。NetEase Gamesが配信するゲーム『天下3』を例にすると、同作では長期的な社会貢献プログラム「天下もって公と為す」を立ち上げたほか、サイト上で行方不明の子を尋ねる「宝貝回家(我が子よ帰ってきて)」、中国の田舎で寒さに凍える子どもたちを支援する「愛心衣橱」の公益2団体と共同で家族捜しの情報拡散や農村児童への衣服寄付を手助けし、プレイヤーの思いやりの心を社会に届けた。

  ゲーム分野の発展はその広がりだけでなく、深さにも注目するべきだ。ゲーム企業はゲームという媒体の強みを生かして、中国の優れた伝統文化の伝承とさらなる活性化を後押しながら、社会のポジティブなエネルギーの発信を促していく必要がある。 文/劉鑫