BACK 2023-03-13

広東省の若手アーティスト、ゲーム音楽でハリウッドメディア音楽賞にノミネート

  広東省の若手アーティスト黄智騫さんが2022年度「ハリウッドメディア音楽賞」にノミネートされたことがこのほど、広東省音楽家協会への取材で分かった。

  黄さんは星海音楽学院コンピューター作曲・レコーディングエンジニア専攻を卒業。主に映画・テレビ番組の音楽や舞台音楽、ゲーム音楽などの創作・制作に携わってきた。2005年には十二面体文化伝播有限公司を設立し、大規模なレコーディングスタジオの運営を主宰。浙江海寧麦格芬影視文化有限公司の制作ディレクターを兼任し、NetEase Games、Tencent Gamesの音楽制作業務を長期的に受託している。中国音楽家協会会員、広東省音楽家協会会員。2021年には広東省音楽人材研修編曲クラスの講師を担当。

  黄さんは多様なメディア形態の音楽領域を行き来するベテランアーティストだ。早くには2016年に、黄さんの携わった『ONE PIECE』のIPゲーム『航海王激戦』(中国語版)が同年の新勢力影響力ランキングで「最も期待されるゲーム」賞を獲得。同じく黄さんの携わったドキュメンタリー『老佛山・新天地』は広東省ラジオ映画ドラマ賞ドキュメンタリー部門で一等賞を獲得した。2021年ハリウッドメディア音楽賞(The Hollywood Music in Media Awards)では、黄さんの手がけた『率土之濱――十三州府組曲』が器楽/管弦楽部門で年度作品賞にノミネートされた。ほかにも楽曲『広州の声(Anchor Lady)』が「広州国際都市革新賞イメージソング」コンテストの一等賞を獲得し、楽曲『功夫伝奇』が広東省放送番組オリジナルソングの一等賞を獲得、楽曲『甘い誉め言葉』が中国音楽家協会2018年優秀楽曲プロジェクトの年度優秀楽曲に選ばれた。

  「ハリウッドメディア音楽賞」は米作曲家・作詞家協会、映画芸術科学アカデミー、ナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンスなどからなる委員会が選ぶ賞で、映画・ドキュメンタリー・ゲーム・CMなどさまざまな媒体の音楽に与えられる。大きく2つに分類され、一つは舞台・映画音楽、SF映画音楽、ドキュメンタリー、ショートムービー、CM、ゲームなど媒体別にノミネートされ、もう一つはポップス、ブルース、ロックなど音楽のジャンル別にノミネートされる。

  黄さんの説明によると、ゲームのサウンドトラック『率土之濱』は東漢、三国時代を背景としており、当時「中国は幽州や冀州、兖州といった13の州府に分かれていた(中略)このサウンドトラックはゲーム内の13の州のマップに音楽をつけたもので、組曲のようになっている」。

  また、この作品の制作にあたっては、プロジェクト側で民謡や各地の楽器に関する資料を収集し、さまざまなアイデアや発想が大変参考になったという。13の州には13種類の音楽がある。創作時には地域ごとの特徴を思い浮かべ、「并州なら、山西や陝西のほうだから、ひちりきを使った。南方では板胡はあまり使われないが、陝西では使う。江浙では琵琶、笛をよく用いる。州によって楽器や音楽の雰囲気が異なるので、創作にあたってはよく考える必要がある」。なかでも涼州の曲がお気に入りで、「敦煌を表現したもので、地域色にあふれている」。

  黄さんの考えでは、中国の音楽が世界に羽ばたくには、「これが自分だというもの、自分の民族の音楽言語や、自分の民族の文化の魂が不可欠だ」という。 海外にはこれは広東の音楽だとかそういうふうに聞き分けられる人はめったにいない。中国は広大なため、必ずしも特定の地域のものを広めようとする必要はない。「第一歩としてまずは中国という大きなくくりで発信するべきだ」。また、自分の民族の音楽があるというのも多少要素が含まれていればよいというわけではなく、民族の音楽的要素を自分の手法に落とし込んで、自分の音楽言語を生み出す必要がある。「中国の物語を外国人に伝えるには、それなりの工夫が必要。内容を理解してもらって初めて受け入れてもらえる」

  文/広州日報・新花城記者卜松竹 通信員陳亮

  (文字資料は広東省音楽家協会が提供)

  写真/広東省音楽家協会が提供

  広州日報・新花城編集者 李巧蓉